馬インフルエンザの分類と症状や治療について

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馬インフルエンザウイルスの特徴

馬インフルエンザ(Equine influenza)の病原体は、A型インフルエンザウイルス(influenza A virus)のひとつ、「オルソミクソウイルス(Orthomyxoviridae)」。ウイルスは直径が約80〜120nmぐらいの円形をしていて、外側は脂質でできた皮膜(エンベロープ)で囲まれています。ひとつのウイルスが細胞に感染すると、8時間後には約100個、1日では100万個に増殖します。

 

 A型インフルエンザウイルスを顕微鏡で覗いてみると、様々な蛋白質で構成されていることが分かります。核蛋白質、マトリックス蛋白質、ポリメラーゼといった蛋白質です。

 

また、表面を覆う皮膜(エンベロープ)にはヘマグルチニン(赤血球凝集素:HA)とノイラミニダーゼ(NA)という2種類のスパイク蛋白質があります。HA抗原はH1からH14、NA抗原はN1からN9までのサブタイプ(抗原型)があり、これらの組み合わせでHAは16亜型、NAは9亜型に分類されます。

 

現在までに分かっている馬インフルエンザは、H7N7(ウマ1型ウイルス)、H3N8(ウマ2型ウイルス)の2つに分類されます。
※豚インフルエンザもA型インフルエンザの一種ですが、H1N1とH3N2の2つに分類されます。

 

@ウマ1型ウイルス(H7N7)

1956年、チェコのプラハで発見されたので、「プラハ型」とも呼ばれます。1987年にインドで感染が確認されたのを最後に見られなくなり、現在では世界中から消失したと考えられています。

 

Aウマ2型ウイルス(H3N8)

1963年にアメリカのマイアミで発見されたので「マイアミ型」とも呼ばれます。アルゼンチンからアメリカに来たウマからウイルスが感染し、その後アメリカからヨーロッパなど世界中にウイルスが拡散し、現在も流行し続けています。

 

1971年には日本でも関東地区を中心に感染が拡大し、主要な競馬(G1レース)が中止に追い込まれるなど、大混乱が起こりました。ウマ2型ウイルスはウマ1型ウイルスよりも馬に対する病原性と伝播性が強いと言われています。

 

※ウマ2型ウイルス(H3N8)はさらに、アメリカ系統とヨーロッパ系統の二つに分類されます。このため、馬インフルエンザを予防するワクチンには、ウマ1型、ウマ2型のアメリカ系統、ウマ2型のヨーロッパ系統の3つに対応する混合ワクチンが用いられています。ただし、ウイルスの抗原は前触れなく変異することもあります。このウイルスの抗原変異に対応するため、10年に1度のペースでワクチン株の更新が行われています。





馬インフルエンザの症状と治療法

馬インフルエンザ検査

もしかして、馬インフルエンザかもしれない・・・!?
そう心配になったときは、検査を受けさせましょう。検査は人間が受けるインフルエンザの検査と同じ。綿棒を使って鼻の粘膜から鼻汁を採取し、培養してウイルスを分離させ、診断します。

 

ただし、ウイルスの分離には特殊な施設や技術が必要で、数日〜数週間単位で時間がかかり、その間にほとんどの馬は症状が治まり快癒します。ですから直接の治療に役立つことは少ないのですが、分離されたウイルスの性格を解析することは、その後のワクチンの更新などに役立つデータの収集につながるので、とても大切なことです。

 

馬インフルエンザ症状

 ・馬インフルエンザのもっとも典型的な症状は、39〜40度の急な発熱、同時に鼻水、咳など呼吸器官の炎症です。馬の平熱は37.5から38.0度。人間よりも少し高いのが特徴です。

 

 ・症状の重さや、症状が続く期間の長さは、ウイルスを浴びた量、普段の体調などに左右されます。

 

 ・ウイルスに感染してから発症するまでの潜伏期間は2〜3日。最初は発熱から始まります。発熱が4日以上続いたときや、鼻汁に粘り気が強くなってきたときには、二次的な細菌感染を起こした可能性があります。

 

 ・発熱中は食欲が低下し、運動能力が減退します。喉の痛みがあるとさらに食欲が低下します。

 

 ・なお、ワクチンを接種済みで、中和抗体を持っている馬がインフルエンザに感染した場合には、症状が軽く済むか、症状が出ずに終わります。ただし、この場合でも鼻汁の中にウイルスが混じっている可能性があり、これを媒介として他の馬に感染が広まる危険性があるので注意が必要です。

 

馬インフルエンザ治療

治療は、症状に対応した対処療法が中心です。長期間の発熱、粘り気のある鼻汁が出ている場合には細菌に二次感染した可能性があるので、抗生物質を与えます。咳がある場合に安易に咳止めの薬を投与すると、ウイルスに感染した浸出液を気道から排出するのを邪魔してしまうことになるので、注意が必要です。
 一番大切なのは、風通しがよく、ホコリの少ない環境で馬を静かに休養させること。ホコリを減らすために、乾草は少量の水で湿らせてから与えるとよいでしょう。

 

※人間のインフルエンザ治療薬として有効なオセルタミビル(タミフル:経口投与)やペラミビル(ラピアクタ:静脈内投与)が馬インフルエンザの治療に効果があるという事例が報告されています。

 

実は、これらの薬剤の馬に対する安全性はすでに確認されており、症状が軽減し、ウイルス排泄期間が短縮されることも分かっているので、今後、馬インフルエンザ治療の選択肢の一つとして使用が広まるかもしれません。